
遠州楽器制作株式会社とご縁をいただき、
以前からその存在を知りながらも、実際に触れる機会のなかったグランドピアノを試弾することができた。
その瞬間から、遠州楽器が大切にしている"音造り"の想いが、手のひらを通して強く伝わってきた。
ひとつひとつの音に、真心と職人の誠実さが宿っている。
この出逢いに、心の底から感謝している。
鍵盤に触れた第一印象は、「音が柔らかい」。
金属的なきらめきよりも、包み込むような温もりを持ち、聴く者の心をそっと撫でる音色だった。
それは派手さとは無縁だが、むしろその控えめさが、音楽の"内なる美しさ"を際立たせているように思う。
「出逢いの音」----遠州楽器グランドピアノとの邂逅
このピアノは、ホールを圧倒するようなコンサートピアノとは違う。
しかし、私のように物語を紡ぐように曲を書く者にとって、これほど心に寄り添う楽器はない。
音が主張しすぎず、作曲者の感情の微細な動きをそのまま受け止めてくれる。
まるでこちらの心の奥を理解しているかのようだ。
タッチは非常に堅牢に造られており、余分な遊びが少ない。
そのため、指先から伝わるニュアンスが、ダイレクトに音として返ってくる。
アクションの反応も秀逸で、弱音から強音まで自在にコントロールできる。
ダイナミクスの変化を描くことが容易で、まるでピアノと会話しているような感覚に包まれる。
正直なところ、私はこのピアノで一生作曲を続けていきたいと思った。
それほどまでに、音も造りも優しく、丁寧で、誠実なピアノだった。
打鍵直後の音の余韻やペダリングには細やかな配慮が必要で、まろやかな音同士が滲みやすい繊細さもある。
だが、それは"気難しさ"ではなく、弾き手に音の呼吸を学ばせてくれる良き教師のような存在だ。
弾き込むほどに、その性格が理解でき、深く付き合っていける。
音楽家にとって、自宅で楽器に向かう時間は、何よりも長く、そして大切な時間である。
そうした日常の中で、このピアノはまさに理想的な相棒だと思う。
穏やかで、誠実で、そして心の奥に響く。
この楽器と共に過ごす日々を想像するだけで、胸が高鳴る。
遠州楽器制作株式会社のグランドピアノは、派手さよりも温かさを、
速さよりも誠実さを、そして強さよりも深みを大切にしている。
その音の哲学に触れたとき、私は改めて「音楽とは人の心に寄り添うもの」だと感じた。
このピアノの力を借りながら、これから自分の中にどんな"音の時間"が生まれていくのか、
想像するだけで、楽しみで仕方がない。
私の音楽活動の源流として、この出逢いを大切に育てていきたい。